大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

高松高等裁判所 平成4年(ネ)46号 判決

主文

本件控訴を棄却する。

控訴費用は控訴人の負担とする。

理由

一  本件に関する事実関係の認定については、左記のとおり、付加、訂正、削除するほかは、原判決理由一、二項(ただし、原判決一八枚目表末行目まで)のとおりであるから、これを引用する。

1  原判決一二枚目表三行目の「本件議事録が作成されていること、」を削除し、同四行目の「いること、」の次に「本件議事録が作成されていること、」を付加し、同九行目の「本件総会は、」から同一〇行目の「得ない。」までを削除する。

2  同枚目裏七行目、末行目の「5」をいずれも「4」と改める。

3  同一三枚目表二行目の「被告」を「右書面には、補助参加人」と改める。

4  同枚目表八、九行目の「成立に争いのない」を削除する。

5  同枚目裏二行目の冒頭に「証人」を付加し、同行目の「田村要」を「同田村要」と改める。

6  同枚目裏二行目の「認められる」の次に「甲第六号証、」を付加する。

7  同枚目裏五行目の「原告本人尋問」「原審及び当審における控訴人本人尋問」と改める。

8  同枚目裏六行目の「認められ、」を「認められる。原審証人山脇憲雄、同山本信次郎、同畠中利雄の各証言、原審及び当審における控訴人本人尋問の結果中右認定に反する部分は、右各証拠に照らして採用しがたく、他に」と改める。

9  同一四枚目裏九行目の「丙第七号証の二」を「甲第七号証の二」と改める。

10  同一五枚目裏一行目の「丙第七号証の一」を「甲第七号証の一」と改める。

11  同枚目裏八行目の「原告」を「タケモト産業」と改める。

12  同一六枚目表二行目の「原告」を「タケモト産業」と、「被告」を「控訴人」と改める。

13  同枚目表七、八行目の「承諾の上で締結された」を「控訴人から右各契約書面を示されて検討のうえ承諾していた」と改める。

14  同枚目表九行目の「表示していた。」の次に「また、控訴人は、補助参加人らに対して、橋田利雄は自分の親戚であるが、実際には被控訴人会社と関係がなく、控訴人が一切まかされている旨を説明していた。」を付加する。

15  同一六枚目表一〇行目から同一八枚目表末行目までを次のとおり改める。

4(一) ところで、本件包括契約の締結される前後から、控訴人らからタケモト産業に対し本件サーキット場計画のための資金六〇〇〇万円を早急に出して貰いたいとの要求が繰り返しなされていたところ、タケモト産業は、昭和六一年一月末ころには、設計測量を行う株式会社ジーエイとの間で国際サーキット場の設計及び監理を総費用一億三八〇〇万円で同社に委任する旨の契約を締結し、その費用の内金六〇〇〇万円を支払つた(これより先の昭和六一年一二月一二日には、控訴人を代表取締役とする被控訴人会社は、株式会社ジーエイとの間で同趣旨の委任契約を締結していたが、その費用一億三八〇〇万円は全く支払つていなかつた。)。また、引き続きタケモト産業は、本件サーキット場計画の実施のための用地の取得のために数十億円にのぼる費用を支出することが予定されていた。

タケモト産業及び補助参加人の側では、このようにして、本件サーキット場計画のために膨大な資金を投入していくのに、別会社である被控訴人会社で本件サーキット場計画事業を行うことに懸念を感じ、このころ、大阪のタケモト産業本社において、山一興産の山下正吉に対し、「このように資金を投入する以上、被控訴人会社を信頼できるように補助参加人一人の会社にしてほしい。そして、資金を出して様子をみて、間違いないということになれば、控訴人らの参加を得て、新会社を設立して事業を進めたい。また、被控訴人会社の資本金も、これだけの事業を進めて行くのに、体面も悪いので増額したい。」旨述べて、被控訴人の資本及び会社組織を本件決議のとおり改めたいとの意向を伝えた(山一興産の山下正吉は、前認定のとおり、本件委任契約によつて、被控訴人会社から、同社の役員の変更、代表権の変更等に関する会社組織の変更、資本の増加並びに会社運営に関する全ての権限を委ねられたことになつていた)。そして、山下正吉もこの申し出を了解し、これを控訴人側に伝えた結果、同年二月一日ころには、控訴人から、登記手続に必要な被控訴人代表取締役控訴人の白紙委任状、印鑑登録証明書及び実印並びに橋田利雄の印鑑登録証明書等が補助参加人に送付されてきた(橋田利雄は、同年一月三〇日に市役所でこの印鑑証明書の交付を受けて、これを控訴人に渡している。)。そこで、補助参加人から委任を受けた大口司法書士が、同年二月一日付けで本件決議の議事録を作成するとともに、その登記申請手続きを高知市の藤田司法書士に依頼し、同月五日には、同司法書士から高知地方法務局に登記申請がなされた。

なお、この間の同年二月三日には、補助参加人やタケモト産業の不動産部長新原栄一が高知市を訪れ、新阪急ホテルで控訴人及び山本信次郎らと会い、これまでの了解事項を確認する趣旨で、「被控訴人会社に従前の債務のあることが判明した場合には、控訴人、山本信次郎及び橋田利雄の三名が責任を負うとともに、被控訴人会社の現在の役員全員の退任を含め必要な諸手続に右三名は協力する。」旨の含書への署名、押印を求めた際にも、控訴人らは何らの異議を述べることなく、山本信次郎はその場でこれに署名・押印し、控訴人もこれに署名したが、印鑑を所持していなかつたために、後日押印したうえ、その場にいなかつた橋田利雄の署名、押印も得てから届ける旨述べて、同書面を持ち帰つた。

(二) ところで、控訴人、山本信次郎及び橋田利雄は、本訴において、同年三月三日ころ本件決議に基づく登記がなされていることを初めて知つたと主張しているが、このころ、これらの者いずれからもタケモト産業や補助参加人に対して何らの異議を述べる等のことはなかつた(なお、《証拠略》中には、同人らは、山下正吉を通じて、本件役員変更等について元に戻すように交渉した旨の供述部分があり、甲第二三号証中にも同旨の記載があるが、いずれも、信用しがたい。)。のみならず、その後の本件サーキット場計画のための用地買収の過程でも、控訴人側から、仲介人に対し、「被控訴人会社は一切補助参加人に渡した。」旨の説明がなされていた。また、控訴人は、同年二月から五月までと同年一〇月から一二月までの間、タケモト産業から送金されてくる毎月三〇万円の金員を受領しており、タケモト産業の側で、同年六月一六日ころ、前記約定に従い、新会社である南国スカイサーキット株式会社の設立のための定款認証手続を行つた際には、控訴人はこの定款に発起人として名前を連ね、大阪市のタケモト産業まで出向いて、必要書類に署名、押印をするなどの協力をした。(もつとも、控訴人は、同年六月一八日にいたり、突然、タケモト産業宛に、同社が本件包括契約に違反して新会社の設立及び運営を行おうとしているなどの理由で、右の新会社設立のための書類への署名、捺印を無効とする旨の内容証明郵便による通告をしたものの、同年一〇月一二日には、タケモト産業宛てに「陳謝及び釈明通知書」と題する書面を送付し、右の内容証明郵便による通告は、株式会社ジーエイの代表取締役である清水和彦に虚偽の話を聞かされて、事情を誤解したものであることを陳謝している。)

また、本件決議に際し被控訴人の取締役を辞任したこととなつている山本信次郎も、前記のとおり、これを初めて知つたと主張している同年三月以降も、タケモト産業や補助参加人に対して何らの異議を述べなかつたのみならず、むしろ、同年三月から一一月ころまで、タケモト産業が主体となつて行つた本件サーキット場計画のための二〇名近くの地権者からの用地買収に仲介人として協力し、タケモト産業から少なくとも約七八〇万円の仲介手数料を受領した。また、その過程で、前記新原栄一と相談しながら、買い主として、「有限会社四国サーキット取締役竹本重雄」と表示した国土法上の土地売買等届出書等も作成している。

二  右認定の事実特に本件包括契約等締結に至る経緯及びその後の諸事情に照らすと、本件決議がなされたとされている昭和六二年二月一日当時の被控訴人の社員は控訴人及び橋田利雄であつたところ、本件決議に際し取締役を辞任したとされている山本信次郎をも含めて、右同日までには、これらの者全員が、本件決議の決議事項について予め承諾、合意しており、これらの決議事項についての登記手続をなすことにも同意していたものというべきであり、右同日まで(橋田利雄が、印鑑登録証明書の交付を受けて控訴人に渡した同年一月三〇日ころ)に、本件決議にそう実質的な社員総会決議が社員二名の集会によりなされた(少なくとも包括契約書等に基づく社員二名による書面決議(有限会社法四二条決議)があつた)ものと認めるのが相当である。そうすると、単に、右二月一日にこれらの者が集合して臨時社員総会を開催したとの事実がなかつたといつて、本件決議が不存在であつたとは言えず、本件決議の不存在の確認を求める控訴人の本訴請求は理由がないものというべきである。

三  そうすると、原判決は相当であつて、本件控訴は理由がないからこれを棄却し、控訴費用の負担につき民事訴訟法九五条、八九条を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 砂山一郎 裁判官 上野利隆 裁判官 西村則夫)

《当事者》

控訴人 森下正道

被控訴人 有限会社四国サーキット

右代表者取締役の職務代行者 山下訓生

被控訴人補助参加人 竹本重雄

右訴訟代理人弁護士 池本美郎

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例